【2021.7.3.熱海土砂災害_第二報】ドローン空撮「共通状況図(住宅、道路、等高線等を追加)」を広域・高精度化し更新、災害対策本部へ提供
2021年7月3日に発災した静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流災害を受け、テラ・ラボは、災害地でのドローン運用の第一人者である東京都立大学 泉岳樹 助教(地理情報学)とともに「空域災害調査・情報支援チーム」を編成し、災害発生直後から現地入りし、ドローンやヘリ、衛星を使用した被災現場上空周辺の調査を実施しました。
災害発生当時、要救助者の救出はもちろんのこと救助者の安全確保も重要視されていたため、本チームは、いち早く捜索活動の手がかりに役立つ精密な共通状況図(COP)のベースマップを作成しました。
※COP=Common Operational Picture(共通状況図、状況認識の統一図)
※COPは、災害の全体像を把握し共有し、組織間で足並みを揃えるため使われる。被害状況の変化や、対応状況の変化を、「見える化」をする。
ドローンやヘリによる航空測量技術を活かし、数千枚の写真データからオルソマップ(真上から見た全体地図)を作成、同地区の地図(被災前)と重ね合わせるなどして、災害発生から2日後の7月5日には、精密な共通状況図のベースマップを公開し、現場の捜索隊等には、できる範囲で情報提供すると共に7月6日には、紆余曲折があったものの災害対策本部長である熱海市長に情報提供しました。
その後、データの広域化・精密化のために継続的に情報収集を続け、等高線、家屋、道路、線路などのポリゴンデータ(平面データ)と統合、7月12日に熱海市災害対策本部へ再度、正式に情報提供をするとともに、防災科学技術研究所が提供する防災クロスビューへの情報提供も行いました。 また、内閣府ISUT(Information Support Team:災害時情報集約支援チーム)を通じた熱海市役所からのオルソ画像の提供依頼(7月12日)に協力しました。
※ポリゴンデータ:地図上で一つの建物や道路、地域を表す多辺図形
現在、ドローンやヘリからデータを定期的に取得し、土砂災害対策現場の差分抽出を行うことで、二次災害の可能性調査を行っています。
■テラ・ラボ災害対策情報支援プラットフォーム
テラ・ラボは、発災直後(急性期)に迅速なタイムラインを実現するため、ドローンやヘリによる共通状況図(COP)の解析の高速処理化の開発を進めています。今回の共通状況図(COP)は「テラ・クラウド(災害対策情報支援プラットフォーム)」で可視化されており、地上支援システム(車両型)に搭載しているワークステーションが解析を行っています。
今秋には、南相馬市復興工業団地に災害対策DXを実現する新拠点の整備を進めており、災害に備えたドローンやヘリを活用したCOPの運用の実装化に向けて行政向け研修会、コンサルティングを実施する予定です。
■株式会社テラ・ラボ
・本社:愛知県春日井市不二ガ丘3ー28
・設立:2014年3月
・代表:松浦孝英
・資本金:3億3910円(資本準備金を含む)
・業種:製造、情報通信、情報処理、コンサルタント
・URL:https://terra-labo.jp
■事業内容
・無人航空機(固定翼、回転翼、VTOL)の設計、開発、コンサルタント業務、運行管理の設計、各種観測オペレーション、オペレーター養成業務
・空間情報の収集及び解析並びにデータの提供事業
・航空機、人工衛星、車両等による写真撮影、観測および計測
・地理空間情報の取得、解析、活用および販売
・環境、防災、地質、森林、海洋、大気、水産、地域情報および資源に関する調査
■泉岳樹(いずみ・たけき)
1972年、京都府生まれ。小、中、高は愛媛県松山市で育つ。東京大学工学部都市工学科卒業。同大学院工学系研究科都市工学専攻修士課程・博士課程修了。博士(工学)。2001年4月より東京都立大学大学院理学研究科助手となり、その後、首都大学東京などを経て現職。専門は地理情報科学、都市気候学。数値気象モデルなどの研究に取り組みつつ、環境調査にドローンを活用する手法を編み出す。東日本大震災をきっかけにドローンを用いた災害調査に乗り出し、産業用ドローンの先駆者プロドローン社とともに、高性能レーザースキャナーなどを搭載した特殊機材を開発。近年多発する自然災害の被災地に赴いて調査・支援活動などに精力的に携わっている。(一社)無人機事故調査研究会 副会長、(一社)日本山岳救助隊 技術アドバイザー、マルチコプター安全運用委員会事務局長、環境三四郎RC部門共同代表なども務めている。
参考
※ 「『ドローン革命』が都市と暮らしを変える」、GLOBAL EDGE、NO.55、2018年10月
https://www.jpower.co.jp/ge/55/opinion/index_02.html
泉岳樹・松山洋著「卒論・修論のための自然地理学フィールド調査」、古今書院、2017年